茶畑に扇風機が使われる理由は,茶樹の新芽を霜から守るためである.茶樹の寿命は数十年にも及び,気温の上昇や低下、強風など,様々な気象条件に耐性を有している.しかし,一定の限界を超えると,生育時期によっては甚大な被害を被ることがある.中でも新芽の生育時期は耐性発達が未熟であり,晩霜による新芽の細胞組織の破壊は,お茶の収穫に大きな影響を与える.霜とは空気中に含まれる水蒸気が地表やその近くの表面で凍結しできる氷の結晶であり,気温が零度になると発生する.これがさらに氷点下2度から3度くらいまで低下すると新芽の細胞組織が破壊され,生育そのものができなくなってしまう.
気温は,昼間は太陽の熱が地表を温めるため,地表面に近いところで高くなり,離れる(高くなる)ほど下がる傾向にある.しかし,夜間は昼間地表に溜め込んでいた熱が大気中に放射されるため,地表近くの気温が下がり,逆に高くなるほど気温が上昇する.こうした現象は気温の逆転現象と呼ばれ,地表近くで晩霜が発生する原因となっている.お茶畑の扇風機は,夜間に大気中の空気を循環させることで,地表面の気温の低下を防ぎ,お茶の新芽を晩霜から守る役割を果たしている.
こうした扇風機(上記のような霜を防ぐ目的から,防霜扇あるいは防霜ファンとも呼ばれる)が取り入れられる以前は,4月から5月の晩霜が予想される時期において,コモや寒冷紗等でお茶の木を被覆し,翌日には被覆をはずすことで晩霜を防いでいた.しかし,被覆の作業自体に大きな手間がかかることが問題であった.防霜ファンは初期投資のみでそうした手間が一切かからないため,急速に普及した.
参考・引用文献
米谷 力(2002).茶園に立っている扇風機は何のため 奈良県.2014年4月25日検索.(http://www.pref.nara.jp/10661.htm)