ソメイヨシノについて
桜はバラ科サクラ属サクラ亜属サクラ節に分類され,その種類は現在400以上にのぼる.原種はヤマザクラやオオシマザクラ,エドヒガンなどの11種の野生種である.ソメイヨシノはヤマザクラとエドヒガンの交配種にあたる.
ソメイヨシノは江戸時代末期から明治初期の頃,現在の豊島区巣鴨にあたる江戸の染井村集落で造園師によって売りに出され,その後全国へ広まった.葉より先に花が咲くため開花が華やかであることが日本人にうけ,当時ひときわ高い人気を誇った.現在では日本の桜の7割以上がこのソメイヨシノである.
ソメイヨシノは若い木でも花を咲かせることから,第二次世界大戦後積極的に植樹され,戦後復興の象徴となった.また,日本の広い地域でみられ,お花見の代表的な品種でもある.
各地にあるソメイヨシノは,すべて人の手による接木などで増やされたものである.種子では増えない.これはソメイヨシノが自家不和合成の強い品種であり,ソメイヨシノ同士により交配した種が発芽に至らないためである.ソメイヨシノと他の桜の品種での交配は可能であるが,発芽に至ってもそれはソメイヨシノとは異なる品種となる.そのため全てのソメイヨシノの元をたどれば,非常に限られた数の原木につながる.全国に広がっているソメイヨシノのほどんどはそれら原木のクローンであり,全てのソメイヨシノが一斉に開花し,花が散る要因となっている.
桜の開花予想にソメイヨシノが使われる理由
上記をまとめると,桜の開花予想にソメイヨシノが使われる理由について,ソメイヨシノが日本の桜の品種の7割以上を占め,日本を代表する品種となっていること.数種の原木のクローンであるソメイシノは,気候の変化に対する反応が全国で同じものであること.これらが理由として考えられる.
参考・引用文献
荻沼一男(1981). サクラ. IN 『日本の植物』(田村道夫編) 培風館.
竹中要(1962). サクラの研究(第1報). Bot.Mag., 75:278-287.
竹中要(1965). サクラの研究(第2報). Bot.Mag., 78:319-331.