環境という言葉を耳にしたとき,思い浮かべる主体は,人によって大きく異なるであろう.労働環境や室内環境といった文化的なものから,海洋環境や森林環境のような自然的なもの,あるいは,腸内環境や口内環境といった自らの体に関するものまで,数え上げればきりがない.環境という言葉は,非常に多くの主体によって形成されている.
また一方で,主体も環境によって形成されているといえる.これは,私たちが何らかの主体を定める際,私たちを取り巻く環境の中の一部から主体を抽出していることを考えれば,自明であろう.
こうした主体と環境の関係をつないでいるのは,文化や価値観,あるいは,動物における本能のようなものである.主体が環境に働きかける作用を主体性,環境が主体に働きかける作用を環境性を環境性と呼ぶ.
主体-環境系概念とは,主体性と環境性が相互に浸透的なシステムをいう.主体と環境の間には相互作用があり,構成する各要素が浸透し合ったシステムとしてのまとまりがある.環境保全に取り組む際,主体環境系を何とするのかによって保全の意味や手法が大きく異なることから,この概念は,自然保護にアプローチするうえで非常に重要な考え方であるといえる.