アジサイの花の色は,アントシアニンという色素によって作られる.厳密にいえば,アントシアニン,補助色素,アルミニウムの3つの関係によってアジサイの花の色は決まる.
アントシアニンは,アジサイの花の中に含まれる色素であり,補助色素は花に色がつきはじめるにつれ,花の中で合成される色素である.一方,アルミニウムは,もともとはアジサイの中で作られるものではなく,根から吸収されてアジサイの中へ入る元素である.
この外的要因であるアルミニウムがアジサイの花の色の構成に大きな役割を果たしており,アルミニウムが吸収されると花は青色になり,吸収されなければ赤色になる.これには土壌にアルミニウムが存在するか否かという点に限らず,アルミニウムが根から吸収されやすい状態にあるかという点も影響する.土壌が中性あるいはアルカリ性の場合,アルミニウムは溶けにくく,根の吸収量は落ち,花は赤色になる.同じ株から咲いたアジサイの花の色が花によって異なるのは,根のアルミニウム吸収の度合いが異なることによる.どの根も十分にアルミニウムを吸収していれば,全て青色の花になり,アルミニウムが吸収されにくければ全て赤色になる.
また,アジサイの花の色が変化する理由として,花びらの老化も考えられる.アジサイの花は,咲き始めは薄い緑黄色,花が大きくなるにつれ徐々に赤や青色へ色づき始め,花の盛りを迎える.盛りを過ぎると褪色し,薄い色になり,色調もくすんでいく.最初は花に葉緑素があるために緑黄色になるが,これは次第に分解され,変わってアントシアニンと補助色素が合成され,赤色や青色になる.これを過ぎると,アジサイの老化により,花びらを構成する細胞中に酸性物質が蓄積し花びらの色は褪色し,薄い色となる.
参考・引用文献
武田幸作(1996).アジサイはなぜ七色に変わるのか?-花の色の不思議を科学する.PHP研究所.