著作権のあり方に関する考察 1 はじめに

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はじめに

皆さんは今から約2年前,2012年10月に違法ダウンロード行為の刑罰化等を取り入れた,改正著作権法が施行されたことを覚えているだろうか.当時罰則規定がないために実効性に欠け,恣意的な運用も示唆される等多くの問題点が指摘されていた本法であるが,コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)がまとめた調査結果によれば,施行後「Winny」「Share」などP2P技術を利用したファイル共有ソフトの利用者数は2013年3月時点で前年から3割程度減少し,一定の効果を上げていることが明らかになった.その後の推移に関しては不明であるが,少なくとも著作権法の改正が多くの人々にとって,著作権そのものの在り方について考える機会となったことは間違いない.

しかしながら,私は,この改正著作権法について,作品の一次利用による直接利益のみに焦点を当て,作品の社会的共有による文化の発展と,それに伴う作品の成熟化に悪影響を及ぼしているのではないかと危惧している.

代表的な例は,二次創作とパロディの制限である.フランスやスペイン,アメリカ等の諸外国では,ある程度の権利が保障されている二次創作とパロディであるが,日本においては,これらを保障する条項は存在せず,著作権者に無断でこれらの行為を行った場合,複製権,翻訳権,同一性保持権等の侵害に当たるものとみなされてしまう恐れがある.マンガに関していえば,複写しての使用はもちろん,模写しても無断複製あるいは,無断翻訳とみなされてしまうのが現状である.また,模写を行った場合について,技術の高い人が描いた作品は盗用とみなされるが,技術の低い人の作品に関しては罪に問われにくいといった矛盾も存在する.

コンテンツの利用を厳格にし,CDやDVD等の一次的な販売収入を求めるのか,あるいは開放して副次的な利益を模索するのかについては,非常に難しい議題となるし,人によって判断も分かれるところであろう.しかし,本来の著作権法の目的は,文化の保護や奨励,振興である.この点を考慮すれば,今回の著作権法改正は単純な締め付けとなっており,理に適ってはいないのではないだろうか.

本レポートでは,現行の著作権法について調査・分析を行い,今後の著作権の在り方について考察することを目的とする.そもそも著作権とは,知的財産権の一種であり,知的財産権は知的財産制度という形で国によって保護されている.まずは,知的財産権と知的財産制度について,以下にまとめる.

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hiragushi
自信がもてないアラサー。ぼっち。 少しでも自分を変えたいとじたばたしている。

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