1.プレーパークとは
プレーパークとは,子どもたちが自らの責任で自由に遊ぶことを方針とし,校庭や公園等一般の場では経験できないような,多様な遊びを提供する場である.
屋外での自由な遊びを通して得られる経験から,子どもたちの自主性や社会性,コミュニケーション能力を育くむことを目的とする.
2.プレーパークと校庭解放の違い
その最大の特徴は,「子どもが自ら遊びを創る場」という点にある.遊具やスポーツ器具が設置され,遊びの幅がある程度固定された校庭や公園とは異なり,子どもたちは,地面に穴を掘ったり,火を使ったり,落ち葉や木の実,どろんこといった自然の素材を使って,あるいは,常備されたスコップやバケツ,金づちなどの工具,包丁や鍋といった調理器具を使って,子どもたち自らが,思うままにやってみたいことを実現していくことができる.一見,火や工具等を幼い子どもたちが遊びに使用することは,危険性が高いように思われがちであるが,パーク内ににはプレーリーダーと呼ばれるスタッフが常駐し,子どもたちの遊びのサポートを行っており,危険性に関しては極力排除されるような工夫がなされている.
もしも一般の校庭や公園において,グラウンドの土を掘り返して穴を掘ったり,火を使ったりすれば,前者は歩行やスポーツの妨げを,後者は安全面を理由に,子どもたちは叱責を受けてしまうであろう.言い換えるならば,校庭や公園においての子どもたちの遊びというのは,大幅に制限されているものといえる.
遊びというものは,子どもたちにとって生きることそのものであり,子どもたちは,自由な遊びを通して,その中から多くのことを学び,成長していく.五感を使って様々なことに興味を抱き,多くの人との関係を築き,試行錯誤し,創意工夫をし,乗り越えていく.プレーパークの存在は,子どもたちのそうした成長の場を提供するという観点から,非常に重要な役割を担っている.
3.プレーパークの歴史
日本で現存する最古のプレーパークは,東京都世田谷区にある羽根木プレーパークである.1978年に国際児童記念事業として始まった.現在は同区内に4つのプレーパークが存在している.
プレーパークは,別名「冒険遊び場」とも称され,その原型は第二次世界大戦中の1943年にデンマークのコペンハーゲン市郊外に設置された「エンドラップ廃材遊び場」といわれている.これを造園家ソーレンセンが,子どもは小ぎれいにデザインされた遊び場よりも廃材の転がった空き地や資材置き場で遊ぶほうが好きだということに着目し,発案した.
1945年,この「エンドラップ廃材遊び場」を訪れて強い感銘を受けたアレン卿夫人が,イギリスに遊び場の思想を持ち帰り,ロンドンに「アドベンチャープレーグラウンド(冒険遊び場)」を設置し,その普及活動を行った.その後,冒険遊び場はスイス,スウェーデン等のヨーロッパ各地,さらに日本へと広がった.
現在多くの国に設置されている冒険遊び場は,その地の特長を生かした様々な取組みがなされ,発祥地であるデンマークがその工夫を取り入れて更なる創造を行う等,相互的に発展している.
4.冒険遊び場の考え方
日本において冒険遊び場の普及活動を行っている団体「特定非営利活動法人日本冒険遊び場づくり協会」は,理想の冒険遊び場の条件について,下記のように述べている.
よりよい冒険遊び場をつくるための条件
○子どもの生活圏にあること
○いつでも遊べること
○だれでも遊べること
○自然素材豊かな野外環境であること
○つくりかえができる手づくりの要素があること
よりよい運営を行うための条件
○住民によって運営すること
○住民と行政のパートナーシップを築くこと
○専門職のプレーリーダーがいること
5.所感
私の幼少期は,どちらかといえば,プレーパークに近いような遊びをしていた.公民館に集まり,野球やサッカーの他,秘密基地を作ったり,庭一面にタイヤや梯子,丸太を並べて自転車で障害物レースをしたり,落ち葉や枝を集めて焚き火をしたりと,その日の気分で様々な遊びをした記憶がある.今振り返ってみると,自身を成長させてくれた貴重な経験であった.
本レポートを通して,プレーパークには,子どもの生活圏や遊びの時間,仲間,自然といった多面的な配慮がなされ,住民と行政,及び専門職のプレーリーダーが協力して運営にあたっていることを知ることができた.プレーパークと校庭や公園との最大の違いは,遊びの自由度であり,前者は非常に高く,後者ではある程度制限される傾向がみられる.プレーパークにおいて,子どもたちは,自由な遊びから,五感を使って様々なことに興味を抱き,多くの人との関係を築き,試行錯誤し,創意工夫をし,乗り越えていく経験を通して,多くのことを学び,成長していくことができる.
しかしながら,一方で,校庭や公園においては,遊びの自由度は低いものの,野球やサッカー,陸上競技等の設備が整っており,専門的なスポーツの振興という面において,非常に重要な役割を担っていることを忘れてはならない.ゴールデンエイジと呼ばれる幼少期は,神経回路の発達が最も盛んに行われる時期であり,この時期の教育が将来の選手の成績に大きく影響するといわれている.
プレーパークと校庭解放の両者を比較しながら,よりよい環境づくりを継続していくことが,子どもたちにとって必要なことなのではないだろうか.
参考・引用文献
「自分の責任で自由に遊ぶ」プレーパーク.東京都世田谷区.2014年11月5日検索.
(http://www.city.setagaya.lg.jp/shisetsu/1209/1295/d00014645.html)
私たちが実現したい「遊び」について.特定非営利活動法人日本冒険遊び場づくり協会.2014年11月6日検索
(http://www.ipa-japan.org/asobiba/modules/asobiba0/)
増山均(1992).子育て新時代のネットワーク.大月書店.